広告脳というもの?

最近更新頻度が減りました、、、twitterやっぱ凄いのかな。たしかにおもろい。


で、この「広告脳」というワードは単なる造語。ググってもろくに出てこない。でもこないだ、コピーライター前田知巳さんが宣伝会議の講義でぽつっとこの単語を口にした。僕も前から頭にあった単語が共有されていた感じがして、少し嬉しかった。

で、どういう意味なの?ということを話すには、まずは今の日本でコピーライターがどういう役割を持っているのかというお話。

前田さんがコピーライターとして携わっている仕事、そこで制作される広告には、必ずしも「広告コピー」があるわけではありません。勤めていらっしゃる会社のHPを見ればわかると思います。http://futuretext.co.jp/

しかし確実に前田さんはこの仕事を担っていて、当然前田さんがいなければ生まれなかった広告です。では前田さんは何をしているのか、コピーライターとして果たしている役割は?

一つは「依頼主の話を聞く」ということです。「詳しく詳しく、親身になって聞く」ことです。
さらに「依頼主に話す」ということです。聞いた話についても、少しそれる内容についても、親しく意見を交換し合う。そこには一般的な「お客と営業マン」のような関係性はありません。

経営者と対話し、その企業メッセージに潜む、彼ら自身にしか分からない、彼ら自身ももしかしたら気づいていない「強いメッセージ」を探り当て、掘り当てる。簡単に言うとこんな仕事です。

ひとつ事例です。転職サイトのen-japanの広告制作を依頼されたときのお話。(もちろん前田さんのエピソードです)
その時のオリエンテーション(こんな広告を作ってくれという逆プレゼン)では、具体的な内容は全くなく、本当に前田さんとen-japanさんの会話がオリエンだったそうです。そして前田さんは話を聞いているなかで、enjapanの人は何度も何度も「転職は慎重にという・・・、やっぱり日本のサラリーマンに転職は慎重にすべきっていう・・・」などと、「転職は慎重に」という言葉を会話に含ませていることを発見したそうです。そこで最終的に前田さんはコピーライターとして意見しました。キーメッセージは「転職は慎重に」しかないと思います。と

時に経営者の方は、自分だけが会社の方向性や発信するべきメッセージについて明確なビジョンをもつばかり、それを会社内の仲間、そして多くの一般人と共有する方法が分からなくなってしまうことがあるのかもしれません。そんなときに、リーダーシップを発揮して、背中を押してあげる。ほんの少し手を加えて上げるのがこの事例のような時にコピーライターが果たす役割です。
前田さんは自身を指して「参謀長官や軍師」のようだともおっしゃってました。なるほどたしかに。「広告はセールスマンシップであるとともにリーダーシップである」と前のエントリーで書きました。共通する考え方なのかと思います。

広告脳っていうのは、誰しも持ち得るものなのかどうか、特殊技能なのか才能なのか、まだよくわかりません。
広告脳というものは、ひとつの考え方、頭の働かせ方なのかな、と僕は感じています。
これを広告したい。どうすればおもしろいだろう。どうすればおもしろいだろう。と、いつも頭をそっちに向けてしまう考え方です。

マーケティングとは相反する思考だとも思います。マーケティングは技術ですから。武装にはなり得ると思います。


・・・、大会社のなかで、社長と従業員との意思疎通ができてないという問題。経営者ならよくわかる感覚なのでしょうか。まだ僕は、自分の出来事としてそれを体験したことはありません。
ただ、大会社の社長さんともなるかたですら、うまくコミットできないビジョン・メッセージを、その人の背中を押して明文化するわけですから、相当な「リーダーシップ」が求められることになると思います、今回の例でのコピーライターには。いくら広告制作のプロとは言え、時には大きな額のお金の采配を実質的に司るようなものですから。そんな「実力」のある広告人が、何人誕生するのか。そういう人が結託すればどういう組織が出来上がるのか、ゾクゾクします。
もしかしたら、もしかしたらですが、世界は激変するのかもしれません。もっと平和になるのかも。
あと20年?いやもっと? とにかく、僕も携わりたいものです。広告世界に。


・・・いち制作者の行く末は?いや、それ以上に、ひとつの広告を作る、ひとつのアイデアをつくることの意義や価値は、減少の一途なんでしょうか。少なくとも相対的には、避けられないことなのでしょう。でもそんな制作者の人たちは、今までだって、もっとやりたい範囲があったんじゃないでしょうか?企画を最終的にだすのは一つでも、埋もれていくアイデア、そして採用されたものの背景をもとに、もっともっと横にも縦にも広がるアイデア。いち広告制作者は、その広告を制作している間に限定した世界で、経営責任者でした。今は、そんな人たちが本当に経営責任者にもなれる時代なのかも。

・・・よい時代です。